協和キリン、zenonで未来を見据えた工場を構築
Success Story
協和キリングループは、日本を拠点とする専門医薬品企業です。ライフサイエンスと技術の進歩を追求し、新たな価値を創造することで、世界中の人々の健康と幸福に貢献することを目指しています。 製薬業界の現代的な要求事項、すなわち初期段階のプロセス開発からGMP製造への円滑な移行や、ますます厳格化するデータインテグリティ(DI)要件への対応を満たすため、協和キリンはシステムインテグレーターであるソフテックと協力し、高崎製造工場にCOPA-DATAのzenonソフトウェアプラットフォームを導入しました。
協和キリンがzenonで未来対応型工場を構築:
協和キリングループは協和発酵工業とキリンファーマの合併により形成され、その歴史は1949年に遡ります。現在では世界各拠点で約5,700名を雇用し、国内には群馬県高崎市と山口県宇部市の2大生産拠点を有しています。東京の北西約100kmに位置する高崎工場では、治験薬および市販製品向けの原薬の製造・調製を行っています。
製薬業界におけるデータインテグリティ準拠の要件が高まるにつれ、規制当局は医薬品製造におけるデータインテグリティ強化を求めています。こうした厳しさを増す必須条件を満たすため、協和キリンは自動化とデジタル化に積極的に投資しています。高崎には168億円(1億1800万ドル)を投じて最新鋭の医薬品原薬(API)製造施設を新設しました。建設はキリンエンジニアリングと大成建設が担当し、将来の拡張を見込んだスペースも確保されました。
高崎工場の他エリアで使用されている既存システムは、デジタルファクトリーに必要な高いレベルのDI準拠性や接続性を提供していません。個々のデバイスへの接続が困難なため、データ収集やデバイス間の連携が制限されていました。
新棟では、協和キリンは優れた操作性と可視性を確保し、データ可用性と管理を強化できる、将来を見据えたSCADA(監視制御・データ収集)システムを必要としており、同社はオーストリアの産業用ソフトウェア専門企業COPA-DATAの「zenon」ソフトウェアプラットフォームを選択しました。
協和キリン 生産本部 高崎工場 エンジニアリング部の岩間浩明氏は 次のように説明します。「zenonは国内外の多くの製薬企業で導入実績が証明されています。zenonが当社のDI要件を満たしつつ、オープンな接続性、拡張性、上位システムを含む将来の拡張可能性を提供すると確信していました」。

調製設備への設定および操作の画面例
高崎工場の新HB7棟は地上4階・地下1階、延床面積約9,250平方メートルで、GMP準拠製造エリアとパイロットスケール製造エリアを併設しています。連続製造技術・自動化・デジタル化を導入することで、パイロット生産からGMP製造への移行を効率化し、将来を見据えた工場の構築を目指しています。
協和キリンはソフテックおよびキリンエンジニアリング社と提携し、製造棟全体にzenonを導入しました。対象はGMP製造設備、パイロット設備、ビル管理システム(BMS)、ナレッジセンター(技術者研修施設)など多岐にわたります。
システムインテグレーターでCOPA-DATAシルバーパートナーであるソフテック 取締役 第二技術部 部長 野中邦仁氏は、「zenonのオープンな接続性と300以上のネイティブドライバが、本ソフトウェアプラットフォーム選定の強力な理由です」と説明します。「これにより、シングルユース機器、分析機器、ユーティリティシステムなど多様な設備への容易な接続が可能となり、将来的にMESなどの上位システムとの統合できる基板が整いました。」
GMP製造プラントおよびパイロットプラントでは、各zenon導入システムが約40台の機器と接続されており、主に三菱電機製PLCが使用されています。PLC通信やOPC UAが利用できない場合には、ソフテックが新規・既存の多様な通信規格に対応するゲートウェイを作成し、全ての機器接続を可能にしました。
施設全体の監視は現在、zenonソフトウェアプラットフォームを用いて集中管理されています。zenonの採用により協和キリンは、FDA 21 CFR Part 11完全準拠を含む進化するDI要件に対応可能となりました。
ソフテックはユーザー情報管理の集中化を実現するため、zenonをMicrosoft Active Directoryと統合しました。さらに、製薬業界の厳しいコンプライアンス要件を満たす生体認証システム「Nymiバンド」との連携により、パスワード不要・非接触・ハンズフリーでのアクセス認証を実現しています。
野中氏は「これらの技術の組み合わせにより、IDやパスワードの入力が困難な環境においても、安全でコンプライアンスに準拠したシンプルなデジタルID認証を実現します。そして、zenonの安全でありながらオープンな接続性のおかげで、これを容易に達成できました」と述べています。

用水設備の監視及び設定操作画面例
岩間氏は「zenonの導入により、従来手作業を要したDI要件の集中管理と自動化が可能になりました。これにより作業品質が向上し、総所要時間が削減されることが期待されます。データレビューなどの補助業務も効率化されるでしょう」と説明します。
HB7棟内の設備は、zenonベースのSCADAシステムで監視され、各デバイスから収集されたデータは中央で一貫して記録されています。得られた情報は直感的なオペレーターインターフェースや管理レポートを通じて確認でき、運転状況の把握とレビューを容易にします。
さらに岩間氏は「パイロット製造からGMP製造への円滑な移行を実現するため、取得データを同一のzenonプラットフォーム内で一貫した形式で収集・管理しています。このアプローチにより開発が加速され、データの有用性が向上します」と述べています。
新施設ではユーザーエクスペリエンスも大きく向上しています。「特定の操作は権限を持つユーザーがタブレット端末からどこからでも共有・閲覧可能となり、一部の設備ではオペレーターが遠隔から監視し、必要に応じて適切な対応を取れるようになりました。ラインに導入した新たなカメラシステムと相まって、オペレーターの作業負荷は大幅に軽減されます。」と岩間浩明氏は説明します。
さらに、ソフテックはzenonのアラームおよび通知機能を協和キリンの既存生産アラートシステムと統合しました。日中は緊急または重要な事象についてスタッフがメールで通知を受け、時間外対応についてはzenonメッセージコントロール(メール配信機能)と自動音声通知システムを連携させることで、関係スタッフにタイムリーなプッシュ通知を確実に配信しています。
機械レベルのHMIでは、zenonイベント履歴リスト(CEL)とzenonトレンド機能により、オペレーターがアラームとトレンドを俯瞰できるようになりました。zenonのトレンド機能は、生産バッチを過去のバッチと比較することで、高品質な生産を保証するために使用されています。長期的には、記録されたパラメータを確認・修正することで、継続的な生産最適化が可能となります。
用水設備の監視及び設定操作画面例
パイロット設備やGMP製造設備に加え、高崎工場のHB7棟には、日本で不足している経験豊富なバイオ医薬品エンジニアの育成を目的として新たにナレッジセンター(技術者研修施設)が設けられています。この施設では、スタッフがzenonを使用して実際の製造プロセスをシミュレートする操作を実行できます。建物全体でzenonが使用されることで、一貫したオペレーションおよびトレーニング環境が確保されており、現場スキルとデジタルスキルの両面から人材育成を支えています。
新たなzenonベースのソリューションは、協和キリンの業務時間短縮を実現しただけでなく、将来の拡張にも対応可能な設計となっています。ソフテックは協和キリンのITチームとの連携により、ITシステム接続のためのドメイン統合も達成しました。また、zenonヒストリアンを活用したデータプラットフォームを構築し、今後のさらなるデータ統合、処理、クラウド接続計画を支援する基盤を整えました。野中氏は「zenonヒストリアンを活用し、データをSQLサーバーに記録することで、zenon内で取得データを統合・蓄積するソリューションを構築しました。協和キリンのITチーム、エンジニアリングチーム、そしてCOPA-DATAとの連携により、全ての製造データが将来のMES統合に対応できる状態を確保しました」と述べています。
zenonベースのソリューションは、医薬品アプリケーションに必須のデータ保護機能のための冗長性を提供します。zenonに組み込まれた冗長性オプションにより、設定を調整するだけで冗長構成を容易に実現できるため、導入作業負荷が軽減されます。
COPA-DATAとの強固で信頼性の高い関係も同様に重要です。岩間氏は「ソフテックとCOPA-DATAからのサポートは素晴らしいものでした。ソフテックによる構想段階からの充実したサポートに加え、COPA-DATAテクニカルサポートチームの支援と、COPA-DATAシステムインテグレーターとの協議を活用しました。生産的なパートナーシップにより、共に大きな成果を上げているのです」と語っています。
将来の拡張と統合に備えるだけでなく、zenonソフトウェアプラットフォームは「プラグアンドプロデュース」型モジュール生産のためのモジュールタイプパッケージ(MTP)データ標準をサポートしており、さらなる拡張性を実現します。設備の追加・交換・アップグレード時には、MTP互換性により、エンドユーザーは事前認定をサポートされた形でMTP準拠モジュールをより迅速かつ容易に適合方式で交換可能となります。
協和キリンチームは、製薬業界がMTP準拠設備・システムへ移行する中で、この機能がますます重要になると認識しています。
岩間博明氏は次のように締めくくっています。「協和キリンは信頼できるパートナーと共に、zenonを強力なツールとして活用し、先進的なものづくりを通じて “日本発のグローバル・スペシャリティファーマ”として病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値を創出し続けます。」
本プロジェクトのシステムアーキテクチャの概要 本プロジェクトのシステム構成イメージ
パイロット製造からGMP製造への円滑な移行を実現するため、取得データを同一のzenonプラットフォーム内で一貫した形式で収集・管理しています。このアプローチにより開発が加速され、データの活用性が向上します。